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Chapter3-4 女王の屋敷へ

 玄関で栄子と合流する。雄介は自分の持つ服の中で最もいい物を選び身に付けていた。髪のセットもいつもより時間を掛け普段なら絶対に履かない革靴を履き栄子と並び立つ。
「ど、どうかな」
 緊張する必要はないはず。なのにどうしても緊張というのは解けない。
「大丈夫だよ。雄介のこと麗華が嫌うはずないもの」
 義姉はそう言って微笑む。確かに彼女の言うとおりなのだがやはり男として少しでもよく見られたいのだ。例え彼女の意識が栄子にのみ向いているとしても。
 現在、朝の八時。朝食を軽く済ました二人はこれから島津麗華の家へと向かう。栄子の予定では昼前に着くのが良いとされた。麗華との間で決めたのだろう。雄介は家に着くまでは彼女のやり方にあわせることにして家を出た。
 島津グループといえば超の付く大富豪であり大企業。複数の会社を傘下にしている巨大組織。その組織を取り仕切るのは麗華の父親である島津武夫。彼は父から譲り受けた島津グループを急成長させた人物でもある。
「今日は麗華のご両親も揃って待ってくれてるみたいなの」
「へぇ、そうなんだ」
 気のない返事を返すが心の中はざわついていた。麗華の両親ということは近い将来自分の両親となるのだから仕方がない。
 今日、行なうは完全な掌握でしかない。日々迫る生徒会主催のパーティーまで残り一週間を切っている今、島津麗華を物にする最大のチャンスなのだ。この機会を逃すような男ではない。
 二人はバスに乗ると流れる風景を見る。
「そういえばさ、麗華先輩の家って行ったことあるの?」
「前に一回だけ、ね」
「どんな家だったのさ」
「どんな……うーんとね。おっきいよ。とにかく大きいの。家って言うよりお城ね」
「城……」
 想像できなかった。
「あとはメイドさんがいるわね。何人だったかな……十人はいたわ」
「メイドが十人ね……もしかしたら執事さんもいたりするの?」
「執事さんはいなかったかな。私が覚えてるのはメイド長の三橋さんね。綺麗で大人の、できる女って感じだったわ」
「へぇ……」
 栄子はその後もぺらぺらと話を続ける。雄介はというと聞いた手前、断れずじっと聞いていた。まさか他の乗客がいるなかで催眠携帯電話を使えるわけはなかった。
 島津家までの距離はかなりのもの。乗っていたバスを降り、別のバスへと乗り換えて数十分、揺られる。さらにそのバスを乗り換えて数十分。もはや別の都市にさしかかるのではないかというほどに遠出だった。
 家を出たのが朝八時、現在十時三十分である。
「あとはこの道を真直ぐ行けばいいのよ」
 栄子はなんとも無いようで歩を進めていく。彼女の後を追っていくと辺りを見渡す。風景からコンクリートビルや屋根の低い住宅は抹消されていた。変わって緑の木が決まった間隔で植えられ作られた道があった。人の作り出した自然が形となって現れる。
「見えてきたわ」
 前方、やや斜め上にその城はあった。
 栄子の言うとおり家ではなく城。城は遠目にも解る通り整理された緑の山に高い外壁とともに存在していた。周辺の土地よりも高い位置にあるその城はおそらくこの辺り全体を見渡す事のできる唯一の場所だろう。
「でかいな」
「でしょ! あれが麗華の家よ」
 驚いている場合ではない。あれが決戦の舞台なのだと気合が入る。
 意を決して歩を進めると束の間、門に出くわした。正確には柵というべき鉄の棒が何本も並び重なった壁だ。左右を見ればずっとどこまでも続いているようだった。ただ二人の前だけが丸い形を取っていた。
 雄介は義姉を見る。すると彼女は何も気にせずに門を開けた。彼女の眼前にあった丸い部分だけが扉のようになって開く。なるほど、と感心しながら中へ入ると空気が変わったように清んでいた。そして背伸びをすると扉の先へ目が行く。
「カメラ?」
 門の内側にだけ丸いレンズがついている。監視カメラのようだった。
「島津家のね。全方位にカメラが設置されてるから警備はいないのよ。皆、家にいるんですって。さぁ行きましょう」
 道は続いている。目的地までまだかなり距離がある。だから、どこでしかけるか、が問題だった。徐々に近付く家の様子に雄介は自分なりのあたりをつけて栄子を催眠状態にした。
「姉さんはこのまま家まで行くんだ。そして挨拶するなかで俺がいなくなったことに気づいて」
「……了解」
 催眠を解くと栄子は黙って歩き出す。雄介は一人、道から外れてどこか別の場所はないかと捜す。
 緑の芝生をがむしゃらに走るとどうやら反対側までやってきたようだった。義姉の姿はすっかり見えない。その代わりに庭園らしき場所に出た。薔薇だろうか色とりどりに咲いた花の庭のなかにいた。
「どなたですか」
 女の警戒心が入り混じった声だった。その声が自分に向けられているのは明白。声のほうを向く。すると思わず声を出しそうなほど美しいメイドがいた。
「もう一度、お尋ねします。どなたさまでいらっしゃいますか」
「あ、ああ。俺ね、俺は城嶋って言います」
「城嶋……もしかして栄子さんの弟さんでいらっしゃいますか」
「はい! 栄子は俺の姉です」
 ゆっくりと近付いてくるメイドは頭を下げた。
「それは失礼しました。私は島津家メイド長の三橋咲と申します」
「あー、あなたが」
「は? それはどういう」
 栄子が言っていたとおりだ。仕事のできるいい女風のメイド。実にぴったりだ、メイド服ではなくスーツを着れば社長秘書という肩書きを今すぐにでも物にできそうだった。
「姉さんから聞いてたんです。すごく綺麗なメイド長がいるって」
 言うと満更でもないのか頬を赤くした。
 彼女は赤いフレームの眼鏡をかけていた。
「そ、そんなっお世辞……」
 彼女を見るとどうしても胸に注視してしまう。
 麗華に劣らずの胸はエプロンドレスでぎゅっと締め上げられている。そのせいか服の上からでも形がわかりそうだ。それに腰から尻にかけてのラインもたまらない。叩けばきっといい音を鳴らすだろう。
 本人を見るまで道具として使えるかどうかを考えていたがそれ以上の使い方ができそうだ。雄介は周囲に人がいないのを見計らうと催眠携帯電話を取り出した。
 咲には何をしているのか解らなかった。雄介を見ているだけだった彼女はなにも警戒する事無く素直に従う。携帯電話を怪しく思うものなどいないだろう。
 眩い閃光のなかで彼女の意識は一瞬沈んだ。
 彼女の耳元で囁く。
 その言葉は時期が来た時すべてわかる。
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tag : 令嬢催眠崩し 小説

2012-12-03 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

之ち

Author:之ち
之ち(ユキチ)

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