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第12話 変化

 出社と同時に阿部がにやにやとしている姿が見えた。なにやら他の社員と話している。手に携帯電話を持っているのであのブログのことでも話しているんだろう。彼は僕を見ると他の社員を置き去りにしてやってきた。
「おはようございます、先輩。さっそくだけどあれ見ました?」
「お、おはよう。あれってなんだよ」
 あまりにも元気な顔をしていた。
「またまた~。ブログの更新分ですよ。あっ、まだ見てないんですね。営業先に出たらチェックしたほうがいいですよ」
「あ、ああ」
 なにをそこまで舞い上がっているのか。これから仕事だというのに心ここにあらずといった調子でまた戻って行く。手に届く距離に携帯電話がある。だが人の目もあるので開くわけにはいかなかった。特に女性のいる場所では無理だ。
 いつものように始業時間となり営業ルートの確認となる。葵のいっていた阿久津一郎が関係している病院もそのなかにある。今日で葵が専属弁護士となって三日目になる。叔父の鏑木さんがいる事務所と勝手は違うが調子はいいらしい。
 なにより仕事の量がまったく違うため夕飯を作る時間はたっぷりあるのだとか。だから僕が帰る頃には家にいる。仕事場が変った以外になにも変ったところはない。
 僕が会社を出ようとすると瀬良さんが声をかけてきた。手を振ってくれることはよくあることだけど呼び止められたのは今日が初めてだった。
「沢木さん、有休取るんですか?」
「そのつもりだよ。もうすぐ結婚記念日でね、新婚旅行に行ってないからちょっとした旅行でもって考えてるんだ。それがどうかしたの?」
「沢木さんなにかあったのかなって思っただけ。へぇ旅行かぁ。いいなぁ、奥さん」
 うっとりとして微笑んでいた。
「相手、いないの?」と自然に聞いていた。
 瀬良さんほどの人なら彼氏ぐらいいる。ちょっと馬鹿な質問だったろうか。 
「相手ねぇ……いないなぁ。前にいい人はいたんだけど……捨てられちゃったのよね」
 アハハと軽く笑っていた。正直なところ意外だった。男がいるのは当然だろうと思える。けれど彼女を捨てるなんていうのはどういう神経をしているのか疑ってしまう。
 つなげる言葉を失った僕に瀬良さんが「いってらっしゃい」といってくれた。僕はちょっと気まずい思いをしながら会社を後にする。
 営業ルートを辿っていくなか、時間を見つけて携帯を開く。誰かに連絡をとるためじゃない。ブログへのアクセスが目的だった。阿部が言っていたとおり更新されている。
『人妻A 調教記録
 彼女の調教は順調に進んでいます。新しいご主人様の手で毎日、愛撫を徹底させています。ですが一度も行為、セックスはしていません。彼女の肉体が官能のなかに堕ちたいと自ら口にするまでおあずけです』
 写真へのリンクが張ってある。前回の更新で人妻Aは裸で土下座していた。あの人妻Aが人間としても完全に支配された姿には驚かされた。
 クリックすると顔の半分以上、もうほとんどモザイクで加工された顔写真が現れた。口は顎を限界まで開いていたが口内は見えない。咥えているものがある。男性器だろう。
『写真は愛撫と共に行なっているフェラチオの訓練です。
 夫のチンポをしゃぶった事のない人妻Aさんはご主人様のチンポを美味しそうに頬張っています。このフェラのあとはザーメンは口に含んで軽くシェイク。なにを食べてもザーメンの匂いと味だけになるまで覚えさせます』
 人妻Aも男のほうもどんな気分なんだろうか。僕にはわからない。と再び元のページに戻るとさらに読み進める。そこには阿部の言いたかっただろう部分があった。
『ブログをいつもご覧になっている読者へ
 現在、調教中の人妻Aと一日デートしませんか。捨てメールで構いませんので連絡先を記入してお送りください。一名様に彼女を一晩お貸しします』
 なるほど、そういうことか。文脈のあとに送り先らしきメールアドレスが記載されている。しかしこれに送るほどの人間は何人いるのだろうか。阿部は本当に送ったののだろうか。僕には恐くて送る勇気さえなかった。なにより葵のいる僕には考えもつかない。

 阿久津病院にやってきたのは昼食後。病院にも食堂はあるがさすがに利用できない。旗を満たすのはあとにして、大きな城のなかを目当ての医者を捜してうろつく。医者を見つけるがあからさまに面倒そうな顔をされる。
 何度も頭を下げてようやく話をしてくれる。営業の嫌なところだがそういう仕事だし、もうなれている。できればじっくりと商品の説明をしたいが、またにしてくれといわれた。結局、時間は作れなかった。
 病院内を随分と歩かされた。少し休んでいくことにした。病院内にはカフェもあるのでそこにいった。珈琲を注文して席につくと次の営業先を調べる。また病院だがここよりははるかに小さい。
「あら、実じゃない」
 突然、声をかけられた。目を向けるとそこには葵がいた。いつもと変らない仕事用の格好。椅子に座っている僕の視線の高さだと彼女の腰と同じだ。そういえばいつからミニのスカートを履くようになったのだろう。以前は男の穿くパンツタイプだった。おかげで太ももが見えていた。ストッキングを穿いているが正直、エロいと思ってしまった。
「葵じゃないか。あっ」
「葵くんの旦那さんかい?」
 葵の隣り、男が立っている。よく知っている硬そうな顔と大柄の身体。阿久津一郎だった。僕はすぐに席を立って頭を下げる。
「はい……夫の実です。こちらが阿久津一郎さん」
「どうもはじめまして。妻がお世話になっています」
「真面目そうでいい旦那さんだ。そういえば製薬会社の営業だとか。うちの病院にも?」
「はい、お世話になっております」
 テレビで見るときはどうも良い人そうには見えなかった。しかし会ってみて分かる。どこか優しい感じのする人物だった。
「ほほう……ではあとで話を通しておこう」
「ええっ!?」
「気にせんでいい。葵君の旦那さんにすこしおせっかいを焼かせてもらうだけだよ。それに判断は病院側に任せる」
「はぁ……ありがとう、ございます」
 頭をあげることができなかった。
「気にせんでいい」
 肩をぽんと叩かれた。目を上げて彼を見るとすぐに出口に向っていく。頭を上げると残った葵が申しわけ無さそうにしていた。
「話をしたいけどごめんなさい、時間がないのよ。行くわね」
 追いかけていく葵の首筋になにか光るものがあった。たぶんネックレスなんだろうけど、つけたことあったかな。
「仕事がんばってね」
 阿久津のあとを追う葵。彼女の後ろ姿にちょっと胸がどきっとした。葵のボディラインは男から見ると魅力的だ。夫の立場としてはいい気分がするんだけど、今日の服装はちょっと納得できない。
 スーツはきっちりとボディラインを浮かび上がらせている。とくに葵の尻はスカートの下から押し上げている。形がはっきりとわかるぐらいに。
 くびれなんかきゅっとしまって流線を描いている。纏めた髪の隙間から見えるうなじも男の気を惹かせるのではないかと思ってしまう。お世辞でなく女性らしさが抜群に出ていて、夫としてはもっと慎ましやかにしてほしい。
 と文句を思いつつ、僕は彼女の後ろ姿に胸が高鳴る一方だった。
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2012-12-18 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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