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第14話 阿久津の影

 阿久津一郎の事務所に雇われる事になった葵だが、日常変わった様子はなかった。あの夜から4日経つが毎日晩飯は出てくるし、朝食もある。ただ昨夜は仕事が遅くに終わり帰って来たのが朝方だった。
 政治家というのは僕ら一般人とは違うが、秘書でもない弁護士が付きっきりになる必要はあるのだろうか。などと考えつつパンを焼いて口に運ぶ。朝食を適当に済ませると僕は家を出た。葵は疲れて眠ったままだった。
 会社に着くとそれはもうごきげんな顔をして出社してくる阿部と出くわす。なにかいいことでもあったのだろう。一目でその幸せぶりがわかった。
「おはようございます、先輩」
「おはよう。なんだよ、その顔は。ニヤニヤして」
「わかります? わかりますよねぇ、へへっ、先輩には後でちゃんと報告しますよ」
 特に聞きたいわけじゃないが、話したがっている阿部を見ると断れなかった。2人して出社するとすぐにいつもの作業へと取り掛かる。
 営業先を確認すると先日の阿久津病院での一件が甦ってくる。妻の姿ではなく阿久津一郎だ。彼は本当に話をしてくれているのだろうか。
「沢木君、ちょっと」
「なんでしょう」
 いつもならさっさと行けという上司が咳払いして呼んでいる。なにか他の社員に聞かれたくないことでもあるらしく肩を寄せた。
「阿久津一郎氏とどういう関係なんだ?」
「えっ」
「いや、昨日の夜に連絡があってな。キミの有休届けともう1つ別に2日間の休暇を与えろといってきた」
 困惑している上司だが、僕も同じだ。どういうことなんだろうか。
「うちとしては厳しいところだが沢木君に休暇を与えればその……利益をもたらしてくれるそうだ」
「それって取引って事ですか」
「だろうね。いったいどういう関係なんだ?」
 話しておいた方がいいだろう。最近、妻が阿久津一郎の専属弁護士になったと説明した。すると上司は理解を示したようで「そういうことか」といった。
「わかった、休暇の件はこちらで手配しよう。阿久津病院と取引できればうちとしては本望だしな。それにしても、キミの奥さんは素晴らしい女性だな、うん」
 不信が消えると上機嫌になる。さらに満足そうに笑い出した。まだ取引が成立したわけではないのに上司はもう決まったかのようだった。
「それでは行ってきますので」
「ああ、頑張ってきたまえ。ああ、くれぐれも失礼の無いようにな」
「はい」
 社を出るといつもの営業ルートを回っていく。
 阿久津病院に着くと医者は僕が来る前から時間を作って待っていた。阿久津一郎がなにか言ったのだろう。態度も全く違っていた。製品の情報を食い入るように聞いてくる。真剣さが違う。嫌な気分ではないが、ここまであからさまに態度が変わると阿久津一郎という存在の大きさを考えさせられる。
 他の病院はとくに変わりは無かった。阿久津病院だけが異常だったのだ。
 会社に戻ると上司が駆け寄ってきて休暇の日取りが決まった。まず7月7日の結婚記念日を挟む三日間。もう1つは明後日からの2日間だ。しかしこの2日間の休暇に心当たりがなかった。上司に確認するとこれも阿久津一郎からの届け出らしい。上司には一切説明がなく、ただ休ませろとのことだった。
 僕にも不明だったがその点は葵に聞けばいいだろう。
「あれ、早いっすね先輩」
 帰ろうとしたところに阿部が戻ってきた。相変わらずニヤニヤしていた。
 先に帰ろうとするといつもと違って「これから時間あります?」といってきた。そういえば朝になにかいっていた。
「ちょっと飲みにいきましょうよ」
「珍しいな、なにかあったのか」
「ええ、そりゃあもう」
 にやついているが社内での会話は避けていた。阿部とは会社の外で会う事は滅多にない、いい機会でもある。僕は阿部と共に会社を出ることになった。阿部は報告を簡潔に済ませる。いつも早く退社する彼らしく、ぬかりなかった。
 着いたのは雑音の激しい居酒屋だった。会社から近いため他の企業からも同じようにサラリーマンがやってきて賑わっている。僕らは奥の席を選んで座った。注文はとりあえずビールだけにした。
「で、ここまで来て話すんだ。相当のことなんだろ」
「そうなんすよ。先に聞いときますけど、今日の昼間あのブログ見ました?」
 やっぱりその話か。僕は首を振った。
「でしょうね、見てたらそんな風になるわけないです」
 阿部が携帯を弄ってブログにつなげる。「ほらっ」と手渡されたので見てみると読んだ事のない記事が掲載されていた。更新は今日の夕方頃だ。
『人妻A ブログ読者と深夜デート
 読者のみなさまから勇姿を募った結果、1人の男性に彼女とのデートをしてもらいました。(男性の名前はTさんとします)
 Tさんは人妻Aを大変気に入ってくれたらしく、写真の通り犯してくださいました。
 人妻AのほうもTさんのチンポが旦那のふにゃちんより気に入ったらしく挿入と同時にイったみたいです』
 いつものように写真へのリンクがあった。表示させると男女が肩を抱き寄せている。顔にはモザイクが掛けられているが口元は無修正だ。口の端が上がっており微笑んでいるのがわかる。そればかりか人妻Aは使用済みのコンドームを咥えていた。小さな画面でもコンドームのなかに精液がたっぷりと詰まっているのがはっきりとしていた。
『人妻AよりTさんへ
 このたびは私のような浮気妻を抱いてくださって感謝しています。夫とのセックスは子供じみていてイクことはないのです。Tさんが私を抱いてくれた時、膣だけでなく子宮までも感じてしまい、はしたなくアクメすることが出来ました。また、浮気したいです。オマンコにオシオキしてほしいです。
 いつもブログを観てくださっている方々へ
 私は夫ではない男性に躾られた淫乱な牝ですが、チンポを勃起させてシコシコオナニーしてくれると嬉しいです。それではこれからもよろしくお願いしますね』
 下着の中でペニスが勃起していた。写真から伝わって来る淫靡な香りと激しい性。さらには人妻A自身の文脈が頭ではなく股間に直接訴えてくる。
「どうっすか?」
「いつもながらに凄いな」といったところでビールがやってきた。
「その写真の男、実はオレなんですよ」
「えっ?」
 阿部はビールをコップに注ぎながらいった。携帯電話をテーブルに伏せるとコップを受け取る。自分のコップにも注ぎながら阿部はまたにやにやしながら笑った。
「ほら、この前言ったじゃないですか。応募したって。そしたらすぐに連絡が来たんですよ。証拠はないんですけどね、その人妻Aってのがどんな顔してるのかはっきりと覚えてますよ」
「顔か……どうだった」
「どうって。正直、ビックリでしたよ。キリっとしてて、頭良さそうで、なんでこんな美人がって。それとあんまり遊んでないみたいでしたね。そのブログで書いてるとおり、最初は夫以外に相手いなかったようです」
「へぇ……」
 伏せた携帯電話をもう一度見ようとしたが阿部が懐にしまった。
「しっかし凄い女でしたよ。あんなエロ女見たことなかったな、またヤリてえ!」
 店の中はずっと騒音続きで少々の音ならなんともなく消える。ビール一瓶を空ける頃には声が大きくなっていたが、僕らの声など騒音に混じって誰にも聴こえなかった。
 阿部は自分が話しを終えると満足したのか家に帰ると言い出した。僕も葵のいる家に帰りたかったので今夜はお開きとなった。阿部は終始ご機嫌でどこまで酔っているのかわからなかった。
 帰宅すると葵が出迎えてくれる。遅くなったが夕食は食べていない。葵は待ってくれていたようで2人で席に着いた。
「飲んできたならご飯も食べてくればよかったんじゃない?」
「僕は葵の作ったご飯が食べたいんだよ」
「ふふっ、ありがと。そういってくれると嬉しいわ」
 彼女の微笑みを目にしているが頭の中は阿部の言葉でいっぱいだった。人妻Aを葵として見立てるという想像があらぬ形で再生される。
 これまでとは違った感覚だ。女を遊びの道具として扱っている阿部と葵。彼女の微笑みに失礼だと思いながら想像してしまう。
「どうしたの?」
 ぞくりとした。自分が何を考えているのか。
「いや、なんでもないよ。あっ……7月7日の休みの事なんだけど。ちゃんと取れたよ」
「ほんとにっ!」
 心底驚いていた。
「ああ、なんか阿久津先生が手配してくれたらしくてっさ」
「えっ……」
「いや僕にもちょっと分からないんでけど、2日間の休暇と3日の休暇をくれたってわけ……なにか知ってる?」
「えと……私はちょっとわからないわ。でもその2日の休みっていつなの?」
「明後日から。なんでも阿久津先生が頼んだらしいよ」
「その日は確か……そうだわ、阿久津先生の地元に行くのよ。帰郷と挨拶をかねて」
「葵も行くの?」
「たぶんだけど、先生は実も呼ぶつもりよ。秘書の黒木さんも家族で行くって行ってたから。いや?」
「そうじゃないよ。おかげで休みも貰えたしね、でもここまでしてもらっても返すものがなにもないんじゃね」
「気にしなくていいわ。阿久津先生は見返りを求めてるわけじゃないし。それに、これは私に対する手当てみたいなものよ」
 食事が終わると僕は片付けている葵に後ろから抱きついた。
「ねぇ、ベッドに行かない?」
 そっと優しく囁く。久しぶりに葵とセックスがしたかった。
「ごめんなさい、今日は……気分じゃないのよ」
「そっか……」
 いまは専属になったばかりで身体が疲れているのだろう。もうしばらく葵とのセックスは我慢したほうがいいかもしれない。僕は葵の尻をむにゅりと触って風呂へと向った。せめてこれぐらいはいいだろ。
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2012-12-19 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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之ち(ユキチ)

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