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第15話 男の価値は妻を愛する心で決まる……はず

 葵の言ったとおり、阿久津一郎のとった休日2日は彼の地元へと行く事となった。準備や挨拶をする間もなく当日を迎える。妻がお世話になっている相手であり、病院の件もある。僕は一言ぐらいお礼を言おうとしたが無理だった。
 集合場所とされるターミナルには僕ら夫婦と事務所のスタッフ達、それと秘書である黒木さんの妻だけがいた。全員合わせて10人ほどで部外者といえるのは僕と黒木さんの妻だけだった。
 阿久津一郎は黒木さんと先に向かっているらしく、僕らは用意されていた小型バスに乗り込んで向かう。彼の地元まではかなりの時間が掛かるらしく、久しぶりに葵との会話に集中できた。
 最近は仕事のことがあってほとんど会話らしい会話ができていなかった。彼女の笑顔と流れる背景の美しさに僕は再度、綺麗な女性だと確認する。必要のない確認だったけどそれでも、葵が、僕の妻が美しい事に違いはない。
「どうしたの? さっきから私の顔ばっかり見て」
「顔ばっかりじゃないよ」
 からかうように胸のほうを見る。葵は胸や尻を見られることを僕にも嫌がる部分がある。僕がふざけているのを知っていても動揺したり、恥ずかしがってもじもじする。
「ふふっ……なぁに、旦那様は見たいの?」
「えっ……」
 一瞬、頭の中が困惑した。
 見ていた胸はスーツの上からで肌は見えていない。谷間はおろか、シャツさえほとんど見えていないのだ。それを葵は自らボタンを1つ外して寄せてあげた。
「んもう、実ったら……えっち、なんだから」
「ごめん、ごめん」
 なんとか笑って誤魔化す。いつもと違った。さすがに葵も僕がふざけているのが伝わったのか。それともなれてきたのだろうか。
「それにしても、あとどれくらいかるんだろうな。もう二時間は走ってるけど」
 車窓から見える景色からすでにコンクリート色はなくなっている。緑の山々が何度も繰り返すように過ぎては現れる。建物も一軒家ばかりで本当に田舎そのもの。
「もうすぐのはずよ。疲れたの?」
「疲れないさ。仕事じゃないからね。でもちょっと……」
「うん、実がいいたい事もわかるわよ。でも大丈夫、阿久津先生は多分、私にたいしてのご褒美にしてくれてるんだと思う。秘書の黒木さんだって奥さん呼んでるでしょ。あれって彼に対するご褒美なのよ」
「そう……なのかな」
「そうよ」
 休暇を貰い新婚旅行の日もまた休暇、この半月程度に5日も休むことになった。いいのだろうか。そこまでしてもらう義理があるのだろうか。たとえ葵に対する厚意であっても少々、強引過ぎないか。
「実は考えすぎなのよ。せっかくの旅行よ、阿久津先生の厚意に甘えましょ」
「……うん」
 屈託のない笑顔と声。調子が悪いのは葵ではなく、僕なのかもしれない。この旅行が終わったらまた水嶋先生の病院に行こう。あの催眠療法を受けるとこの気分も晴れるだろう。
 ほどなくしてバスは高速道路を降りた。それほど景色に差はなく、陸路に切り替えるとその自然の多さにはく地が半開きになってしまった。
 僕は都会で生まれ育ったせいか田舎にはほとんど思い出がない。阿久津一郎の地元というのはマンションさえ珍しい一軒家ばかりの景色だった。目立った商店街もなく、随分と人を避けた山奥に彼の実家はあった。
 阿久津一郎はなにも仕事でやってきたわけではない。僕らが彼の実家に入るとすでに宴会が始まっていた。どうやら彼を祝して毎度のように行なわれているらしく、スタッフ達はすぐに席を見つけて座りだした。
 僕も葵と並んで座ったが隣に座っていたご老人に酒を注がれた。
「なんじゃぁ、若いの。一郎とはどういう関係じゃ?」
 顔が真っ赤だった。目は半分しか開いていない。呂律も怪しかった。
「僕ではなく妻が阿久津先生の弁護士になったんです。僕は今日付き添いで……」
「そうかぁ! そうかぁ! ははっ! べっぴんさんじゃぁ!」
「ありがとうございます」
 葵が頭を下げた。僕も同じように頭を下げる。愉快に笑うご老人は「ほれっ」とグラスの底を持ち上げてくる。飲めといっているらしい。僕は一気にグラスのなかを飲み干した。
「ひょう! ええ飲みっぷりじゃ! ほれぇ、もういっぱいのみゃぁ」
 ビールの瓶は宴会場のそこかしこにあった。屋敷の一部のはずが、店の中のように広い。
 そういえばとバスから降りて見た外見を思い出す。僕らの住んでいる一軒家とは比べるのが失礼なくらい大きい。母屋だけでなく離れや小屋も見受けられた。
 会場のなか殿様のように振舞っている男の凄さを見せ付けられているみたいだった。
「ね、実」
 袖を引っ張る葵に目を向ける。
「わたし、挨拶にいってくるから」
 顎を引く。途端にご老人が肩を掴んでくる。
「ほれぇ、若い旦那さん。もっと飲もうやぁ」
「そうじゃ、わしらともっと飲もうでぇ」
 この宴会場、見渡すとほとんどが還暦かそれ以上の年齢の人ばかり。比較的若いのはバスに乗ってきた僕らと阿久津氏の隣りにいる秘書の黒木さんぐらいだ。端のほうまで見るが僕と同い年の人物はいない。
 葵が立ち上がり阿久津のもとへ行く。老人ばかりの間を歩く彼女は夫の僕がいうのもなんだが刺激的すぎないだろうか。仕事用のスーツを着ているだけだがかえって艶かしく見える。こんなことは初めてだった。なんでもない妻の後姿は男の目には毒に見えた。
「しっかしえらいべっぴんさんじゃぁ。兄さん、ええ女モノにしたなぁ」
「え、ええ」
「いひひ、夜のほうもかなりエエ暮らししとるんじゃろうなぁ」
 彼らのいいたい事はなんとなしにわかる。僕は愛想笑いしかできなかった。それよりも会場中の男たちが年甲斐もなく女に向ける目はどれも獣のよう。葵はビール瓶を手にしてお酌しはじめる。なにか話しているようだが会話の内容は聴こえない。
「乳も大きいし、腰もひひっ、なぁお若い兄さん。せがれはおらんのかい? あの腰つきは相当のもんじゃぞ」
「まだ子供はいないんです。彼女が仕事に専念するためで」
「ほう……仕事ねぇ。仕事は大事じゃが、そりゃ男の甲斐性じゃ、女は子を産むのが仕事じゃよ」
「こらこら、そういう時代じゃないんじゃろうよ。なぁ兄さん」
 ご老人方の話は酒によって勢いを増していった。葵はというと僕のところへ戻ってくるまでかなりの時間を要していて注いだ先で受ける酒に顔を赤くしていた。
 宴会場にいた全員が深い酔いで大声を上げるなか阿久津一郎が声を上げた。彼の声は誰よりも大きく、強かった。彼よりも歳が上のご老人方も耳を澄まし口を閉ざす。まさに彼がこの場の天であった。
 宴会がお開きになったのは夜の七時頃、阿久津が発した言葉によって解散となった。
 僕らは客用の部屋が与えられた。宴会場のある母屋から一度外へ出る必要がある。
 立ち上がると葵の身体がふらっと揺れた。
「熱いわね……」
「あまり飲めないんだから無理しちゃだめだよ」
「そうはいっても、これも仕事だから……」
 お酌して回っている間、結構な量を飲んだはず。倒れやしないかと葵を支えながら廊下を歩くと阿久津一郎がいた。秘書の黒木夫妻となにやら話をしている。僕らに気づくとすぐに話を止めた。
「葵くんは大丈夫かね」
「え、ええ、私なら。少し寝ればすぐに」
 1人で立つがやはり足元はおぼつかない。すぐに肩を支える。
「今日はお招きありがとうございます。休暇のほうだけでなく、営業のほうも」
「いやいや、気にすることはない。まだ取引が決まったわけではないからな。それより今日はゆっくりと休むといい。そうだ、わしの家の風呂は露天風呂でな。なかなか味わい深いぞ」
 僕らは客室へと向かった。敷地の広さには圧倒される。母屋の裏にあった客室用の離れはまるで時代劇に出てくる長屋だ。個室がいくつも並んでいる。僕らは明りが着いていない部屋に入る。
「ほんとに大丈夫なのか?」
 部屋の中には布団が2人分、並んで敷かれている。一晩過ごすには十分な生活用品が備えられており冷蔵庫もある。なかを覗けばミネラルウォーターもある。1本拝借して葵に与える。
「落ち着くわね……ああっ、なんか眠くなっちゃったわ」
「飲みすぎたんだよ。僕は……風呂にでも入ってくるか」
 反応がなかった。葵に目を向けると寝息がかすかに聞こえてくる。どうやら一瞬で眠ってしまったようだ。疲れが溜まっていたのかもしれない。葵の髪を撫でて部屋を後にした。
 夜風が体を冷やしてくる。アルコールで熱せられた頭の中がすっきりしていく。葵だけでなく僕も多少酔っていた。宴会場で飲んだ分が外へ出ようと訴えてくる。
 トイレはどこにあるんだろう。母屋にあったはずのトイレは結構歩かなくてはならない。客室にはトイレがなかった。多分、客用のトイレがどこかにあるはずだ。
 急ぎ足で周囲を詮索すると公衆トイレのような建物があった。やはりこの家の大きさは巨大だ。向かって行くと男女を分ける看板が掛けられていた。当然男用のトイレに駆け込むと小便用のトイレが4つ並んでいる。背後には大用の個室が3つ。
 なかには誰もいなかった。訴えが強くなってきたので小便用のトイレに向かう。急いで取り出すとしばしの放出に浸る。
 自分でも長いと思えるほど出てくる。相当飲んだらしい。頭もぼやっとしているので身体が揺れる。
「ップ! ははっ!」
 なにか笑い声が聴こえた。足に力を入れて立つと入り口のほうへ目を向ける。するとそこには僕と同じように用を足す男の子がいた。
「おっさん飲み過ぎだよ、ふらふらしてんじゃん」
「そう、みたいだね」
 まだ中学生か、いや小学生のようにも見える体格だ。顔は多少ふけて見える、というか濃いな。30過ぎのおっさんが子供の身体に乗っかっているようだ。偏見かも知れないが田舎のいも臭さというのが良く似合う。
「きみは……宴会場にいなかったね」
「ああ、俺たちガキはじーさまの宴会場には行ってないよ。でも屋敷の中にいたんだ」
 じーさまと言うのは阿久津一郎のことだろう。
「おっさんはあのデカ乳の弁護士ねーちゃんの旦那さんなんだよね」
 なんて失礼な子供なのか。人の妻に対してデカ乳なんて……たしかに合ってはいるけど。子供のいうことにいちいち腹を立てるのもいけない。ここは流そう。
「そ、そうだよ。キミは?」
「田上源太、じーさまによくしてもらってんだ。しっかしおっさんのチンポちっせーなぁ」
 失礼極まりない子供だ。便器の中にまで覗きにくる。
「こらっ! やめないか」
「へっへーん。見ろよ、俺のチンポ。でっけーだろぉ、こいつを女のあそこに突っ込んだらヒィヒィいうんだぜ。最初は俺の顔なんか好きじゃないって言ってた女もセックスが終わったら大好きぃって蕩けた顔でさぁ」
 どこでそんな言葉を覚えてくるのか。腰を前後に動かして見せ付けてくる。
 確かに田上少年のペニスは大人顔負けの大きな逸物をしている。まだ勃起していないのにぶらんぶらんと揺れている。僕のペニスが勃起しても大きさでは勝ち目がない。
「へへーん」
 したり顔で見てくる少年に何も思わないはずはない。ペニスの大小で男の価値が決まるわけはない。そう信じてペニスをしまう。
「あまり下品なことはしないほうがいいよ、源太くん」
 紳士に振舞うことで大人の威厳というものを見せつける。決して少年らしからぬペニスの大きさに負けたのが悔しいわけじゃない。
 トイレをあとにするが田上少年は何も言ってこなかった。少しは分かってくれただろうか。
 露天風呂の入り口はすぐそこにあった。だけど僕は気が乗らなくなっていた。葵の寝ている部屋に戻り、確かめたいことがある。
 部屋に戻るとまだ布団で寝ている葵に手を伸ばす。
「葵、起きてる?」
 暖かい彼女の身体を撫でる。シャツのボタンを外し、スカートのホックに手をかける。なかなかうまくいかず時間が掛かってしまった。
「……ん、実? どうしたの? お風呂に行ったんじゃ……」
「風呂に入る前に、その……どうしてもしたいんだ」
 肩に手を置いて真剣に見つめる。葵が疲れているのはわかるけど、この1週間セックスしていない。もう股間は我慢できない。
「いいわ、でも……」
「わかってるよ。コンドームだろ、ちゃんとつけるよ」
 葵を抱きたいと思う気持ちは好きだという意思があるからだ。彼女の考えを尊重し、大事に思えばこその否認。僕はシャツを明りを消して脱がせる。
 暗がりの中で下着を脱がそうとした時、いつもの素気ないデザインではない事に気づいた。触れるとざらざらとしている。なにか模様が入っているらしい。
「新しい下着、買ってみたの。その……実が喜んでくれるかなって……見てみる?」
「葵がいいなら」
 再び明りをつけると黒い薔薇が彼女の乳房に咲いていた。桃色に染まった肌に咲く花は乳房だけでなく股間にも一輪。いつもの白一色の質素な下着ではなくTバックショーツだった。
「綺麗だよ、葵。これまでと違って……ほんとうに綺麗だ」
 下着だけではなかった。やっぱりネックレスをつけている。少し、値段の張りそうな綺麗な輝きが谷間で輝いていた。そういえば最近、つけていたっけ。
「ありがとう、実」
 明りを消して口づけする。もっと見ていたかったがペニスは瞬時に勃起してしまい、下着のデザインを愉しむ余裕はなかった。だから下着もすぐに脱がした。
 いつものように彼女の身体を撫でて感じさせる。下半身を重点的に責めて、秘部から愛液を流させると僕はコンドームを装着した。
「きて、実……わたしのなかに……」
 挿入すると葵がぎゅっと僕を抱きしめてくる。そんなに気持ちいいのかと嬉しくなる。
「あ、はぁ……実、好きよ! 大好き!」
「僕もだよ、葵。葵が大好きだ!」
 相手の名前と好きという言葉しかしらないようにさえ思えてくる。好きだと繰り返しながらひたすら腰を動かす。
「あぁ、いいわ! 好きなの! 実が好きでたまらないのよ!」
「僕もだよ! 葵!」
 家と違うから、酒が入っているから、葵はいつもより大きな声で叫んでいた。腕に込められている力も強い。挿入している秘部の感触もいつもより狭く感じた。腰を動かして彼女の膣内で暴れる。絡みついてくる肉ヒダに負けまいとするが無理だ。気持ちよすぎる。
「ごめ、ん! もうイクよ」
「いいわ、いいからぁ、一緒にイキましょう!」
 腰を打ち付ける。葵を愛する気持ちが加速させるんだ。そして彼女は僕の愛を受け入れてくれている。ペニスの大きさなんか愛の前じゃ関係ないんだ。だって葵は感じているじゃないか。
「実! みのるぅ!」
 僕の名前を必死に連呼する葵。限界となったペニスが射精する。瞬間、僕らは一つになれる。葵と身体を密着させて肌で彼女を感じる。
 射精が収まると精液の溜まったコンドームを外す。やはり溜まっていたんだろう。けっこう出た。
「お風呂、行こうか」
 全身が汗に塗れていた。部屋を出ようとすると肩を掴まれた。
「まってよ、ねぇ……もう1回、しよ」
 答えは決まっている。葵のほうから僕を求めてくるなんてなかった。今夜はやっぱり、いつもと違う。きっと体内に残っているアルコールに浮かされているんだ。
「いいよ。でも……時間、かかるかな」
 射精したばかりのペニスは力なく項垂れている。せめて10分はほしい。葵はなんとなしに頷いて僕の唇を奪った。僕も舌を絡めて葵を貪る。
 僕らは布団の上で乱れに乱れた。
 溜まっていたのは僕だけじゃなく、葵も同じだったんだろう。

 翌朝、阿久津一郎に招かれた一団はまたバスに乗って帰路に着いた。
 突然の休日だったが久し振りに燃えるような夜を過ごせたことに感謝した。家に帰るまで葵と何気ないことで話をして一睡もしなかった。
「ねぇ新婚旅行はどこにいこっか」
「そうだな、考えたんだけど、今からじゃ海外はちょっと厳しいか」
「海外……そうね、3日じゃ時間もないし。私は実と一緒ならどこでもいいわよ」
 そういって微笑む彼女の肩に手を回す。旅行の案は帰ってから決めよう。
 人生最高の旅行にするんだ。
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2012-12-19 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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