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第19話 子供

 沖縄での3日間は確かに面白かった。相手が葵ではなかったし、結婚記念日であることを考えればその感想はおかしいと思うが事実、僕は仕事から解放されていたこともあって3日間なんのストレスもなく過ごせた。
 ただ、心残りがあるとすれば沖縄から送ったメールに葵が返信してこなかったこと。そんなにも仕事が忙しいのだろうか……。せっかくの日なのだから声を聴くだけでもしたかった。
 海藤と別れて家路につく。当然、連絡がつかないのだから迎えはない。僕は1人きり家まで帰るとドアを開いた。
「ただいま」と家の扉を開くと葵が玄関で待っていた。
「お帰りなさい、実」
「どうしたんだよ。こんな場所で……いつから待ってたの?」
 いつ帰るか伝えていなかった。乗る飛行機やここまでの時間を考えれば、だいたいの予想はつくと思うけどそれにしても完璧に把握するなんて無理だ。
「1時間前くらいかしら。さぁ、あなた、こっちへきて」
 荷物を置いたまま、彼女に誘われて僕は歩き出す。家の中はいつもと変らなかったがなにか甘い香りが漂っている。胃が音を立てそうな甘いソースの香りだ。
「わたし、仕事の間もさっきも考えていたの」
「なにを?」
「なにって……私たちのことよ」
 くるりと振り返った葵はリビングへ向かっていく。僕も同じようにする。いつものテーブルには1人分の料理が並べられていた。彼女が僕に向かって座るということから、その料理が僕のものだろうとわかる。
「私たち、このままだと作れないと思うの」
 料理の事だろうか。それともなにか別のことか。椅子に座ると「食べて」といわれた。
 なにか彼女なりのイベントらしいのは確かだ。僕はテーブルに用意された料理に手をつける。洋食皿に分厚いステーキが1枚。やたらと濃いソースが掛かっている。
 一口頬張ると1時間前から待っていたというのが嘘みたいに熱かった。湯気はたっていないがしっかり熱いと感じられた。
「美味しい?」
「美味しいよ。で、なにが作れないの?」
 葵がそっと微笑んで口を動かした。声は出さなかった。短い三文字の言葉に合わせて唇だけが動いていた。
「こ、ど、も……子供?」
「正解」とにっこりして「実は作りたいって思っててくれたのよね。でも私の仕事を優先してばっかりで、できなかった」
「そうだよ。でもべつに悪い事じゃない。僕もわかっていることだよ」
「私も実の考えに甘えていたと思う。自分がしたい事を優先させてたから。でもね、でも……じゃあ、いつになったら作れるのかって考えたの。結婚記念日だったから……」
 葵は席から立ち上がると僕の隣りにきた。膝に座るように密着してくる。
「阿久津先生のお仕事、大変なのは身をもって知ったわ。おそらく来年の今頃にはまた選挙だの何だのってなる」
 議員というのは選挙によって職を得る。阿久津一郎ほどの人物となると落選するとは考えられない。でも大変なのは変らないだろう。テレビで見ていてもその辛さは十分に伝わって来る。つまり葵もまた忙しくなるという事だ。
「だから……今しかないと思うの。もし、この機を逃したら……私たち30まで子供が出来ないかもしれない。そう考えたら、わたし、つらくて……実はどう? 子供」
「賛成だよ。でもいいの、だって――」
 唇が指で止められた。
「ステーキを食べ終わったら寝室にきて。私、実が欲しくてたまらないの……ふふっ、1日遅れの結婚記念日よ……」
 心臓がぎゅっと軋んだ。葵の瞳が妖しく輝いていた。
 去っていく葵に僕は興奮を抑えられなかった。そんなことできるはずがない。ステーキは大きく他になにも入らなくなるほど分厚い塊だったが、一心不乱に腹へ詰め込んでいく。
 ひたすら噛んでたいらげると水で口を洗って、寝室へ向かう。
 そういえば以前、葵とセックスしたのはいつだったか。阿久津一郎の実家でしたっきりだ。考えてみるとあの夜が最後だ。随分と間を置いていたせいか、激しい夜だったのを覚えている。
「いいかい?」
 寝室へ入る前に問い掛ける。
「いいわ、入って」
 なにか準備でもあるんじゃないだろうか、と考えたのは正解だった。赤い炎をイメージさせる間接照明がベッド周りを照らしていた。
「どうしたんだい、これ」
「ちょっと友達に聞いたの。夫との生活にはシチュエーションが大事だって。それに……せっかく子供を作ろうって決めたんだもの。あら、ちょっと過激だったかしら」
「ううん、いや、葵が綺麗でさ。ちょっとビックリした。こういうの嫌いだって思っててから」
 いつもなら暗がりにする。葵の裸身をちゃんと観たことなんてほとんどない。彼女はそういうのをいやがるから。僕は彼女を大切にしているんだから無理強いさせたくない。そんな気づかいを今日はしなくていいらしい。
「さぁ、きて。作りましょ。『私と実』の子供を」
「ああ……僕らの子供を作ろう」
 僕らはベッドのなかで口づけをした。
 赤い明りのなかで彼女の身体を触り、舐めた。僕が知っている、僕だけが知っている彼女の深いところまで愛する。
 大きな乳房を揉みしだき、腰のくびれをぎゅっと抱く。
 葵も大きな声で喘ぐ。過剰なまでの美声だ。僕は官能の世界でひたすら彼女の身体を慈しむ。どうすれば子供はできやすくなるのだろうか。
 そんな考えを覆すのは葵の反応。彼女は僕がそっと触れただけでもすごい声を出す。いつもと違うのだと訴えかけてくる。その声に僕も力を込める。
 はじめてコンドームのないセックス。生のペニスを彼女の膣内へ挿入する。深く、深くと奥を目指して貫いて子供ができるように願う。
「いいわっ! はぁん! みのるぅ! みのるぅぅ!」
「僕もだよ、葵! 作ろう、子供を作ろう!」
 腰ではなくペニスを彼女の膣奥へ突き入れる。なにがあっても子供を作るんだと念じて突き入れる。必死だった。
「射精るよ!」
「ええっ、ええっ!」
 セックスに要した時間はほんのわずかだったと思う。自分の身体から搾り出した精子は間違いなく彼女の膣内で広がった。
 はじめて本当の男になれた気がした。セックスをして童貞でなくなるのとは違う。もっとべつの彼女を愛しているという僕の愛を注ぎ込めたからだろう。
「ねぇ、みのる。今日は……もっとしましょう。もっと、もっと、わたしの身体に、ここにわたしたちの子供を宿すの」
 全身を汗で濡らしていた。僕は彼女の身体の柔らかさに身を落とし、ひたすら突く。さっき食べたステーキのようだ。柔らかい肌をぎゅっと抱きしめると芯に辿り着く。そこもまた柔らかい場所でどこを味わっても汁が垂れてくるのだ。
 僕らはこどもを作るため、必死になって交わった。おそらくこんなにも乱れる日はこないだろうと思えるほど僕らは恥も外聞もなくお互いを求めた。
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2012-12-20 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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之ち

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