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第20話 隷属の誓い

 沢木家にとっておそらく最後の絆であったものが消えた。
 子供を欲しいと願った二人の気持ちには全く違う思いがあり、夫の実は妻の気持ちに気づく事さえできなかった。この半月での変化にも気付かない。
 葵の心は決まっていた。あの男性なら自分の変化に気づく。暴力的で、権力を振りかざすが男としての強さはもっている。自分が馬鹿なことをしていると判断できるが、それでもとまらない。
 朝を迎え、夫のいなくなった家のなか、いつもよりも濃い化粧をした。といっても普通の女性がしている程度であるが。スーツも金の掛かったいわゆる気合の入った服だ。全身、足の先から頭の天辺まで彼女はきっちりとした。
 阿久津一郎の事務所に着くといよいよなのだと緊張し、スタッフに挨拶を交わした。誰もおかしいとは思っていない。いつもと何ら変らない日常である。ただ、1人を除いて。
「おはよう、葵くん……おや、今日は随分と張り切っているな」
 阿久津一郎だけは違った。椅子に座って新聞に目を向けていたがすぐに置いて変化を問う。
「今日は何かあったかな」
「いいえ、特に何も。ですが……あなたの態度次第では……ありえるかと」
 男というのは誰も同じだ。言葉に含みを持たせて話をするとその先を想像して表情を変える。阿久津一郎の表情はにやっと一瞬だけ緩んだ。
「わしの態度次第か……なんだ、いってみろ」
「一昨日のことよ、妊娠しているかどうか調べたの」
「ほう……。結果はいわなくていい。していたんだろう。わしの種をあれだけ仕込んでやったんだ。孕んどるさ、のう」
「ええ、そのとおりよ。あの夜で……妊娠したわ。間違いないわ、他にシテないから。それで、どうするつもりか聞きたいの」
「聞きたいだと? 違うな、葵くん、キミはわしの口から聞きたいんじゃないだろう。そうなら別の言葉でいうはずだ。むしろ気の強いキミなら脅してくるはずだ。世間に公表すると」
 阿久津一郎は怯みさえしない。余裕は消える事無くそのままでむしろ、立場をわきまえろと威圧してくる。葵はこうなることを分かっていた。なにもかも考えたとおりで、自分はその考えに従って動くだけだ。
「海藤君に騙されて、身体を変にされた。あなたに犯されて、ここには子供がいる。今なら堕ろせるけど……わたし、考えなかった。それどころかもっと違うこと考えてた。私ね、夫に抱かれてもほとんど感じなかったのよ。昨日は大声をあげて、娼婦みたいに喘いで……誤魔化したわ。そんな私に気づきもしないで……。心の中で思ったわ、この人は私を満足させてくれる人じゃないって。私のことを満足させてくれる人は他にいるって」
「そいつは誰だ?」やけに怪訝な表情をしていた。
「誰って……分かってるでしょ。あなたよ。私、身体だけじゃなくって心までおかしくなっちゃったみたいにあなたのことを想っていたの。無茶苦茶にされても結局、あなたを思い出して……あのブログの人や、子供たちとシた後も、あなたのことが頭に浮かんできたの。これって海藤君の仕業じゃないわよね」
「どうかな、わしは頼んでいないがな」
 考えてみろといっていた。しかしこの男がそんなちっぽけなことを企むだろうか。身体の疼きが催眠によるものか葵には判断がつけられないが阿久津を見る限りそれはない。
 葵はふっと笑って話を続けた。
「私、自慢じゃないけれどこれまで何人も男の人の告白を断ってきたの。みんな、私の胸や尻ばっかり見てくるし、なにより視線がいやらしいの。エッチすることばかり考えてる……あの目よ。でも気づいたわ、彼らが普通なのよ。普通で、それが男としての強さなの。あなたのようにね」
「要点を言ってくれ。スケジュールでは――」
「大事なところよ、すぐ済むわ。はじめて、告白します。私、沢木葵は沢木の名前を捨て高円寺に戻ります。1人の女として阿久津一郎様をお慕い申し上げております。私と、お付き合いしてください」
 阿久津一郎は既婚者だ。歳も七十を越えている。葵の三倍以上の年齢だ。それらすべて承知している。しかし、言うしかなかった。これが葵の気持ちだ。これまでのような奴隷としての扱いではなく、1人の女として扱って欲しいと願う心だった。
「わしが妻を捨てるとでも?」
「思わないわ。私は二番手でもいいのよ。あなたに女としてみて欲しいのっ!」
 葵の腰を掴み抱き寄せる。キスする手前まで顔を近づける。
「いいか、わしの女は葵くんのほかにも大勢おる。全員がわしの子を孕んで出産しているような連中だ。そのなかの1人としてならかまわん」
 情など一切ない。ただ孕ませるだけの肉壷。
 じっと見つめる瞳にはそう書かれていた。これまでよりももっと主従関係の強まったまさに性の奴隷。それこそが自分の立場なのだと思い知らされる。頷けばどうなるか、考えただけでも身の毛のよだつ関係を葵は受け入れた。
「いいわ……でも大事にしてくださいね。でないと、わたし……」
「大事にしすぎて乱暴にしてしまうかもしれんな。葵くんは可愛いからな、抑えが効かん」
「まぁ……」
 手が掴まれた。朝から元気な股座が葵の手を温める。この1本のペニスに根本から覆った。自分の愚かさを咎められない心は身体の疼きを正直にさせる。
「今夜までおあずけだ。いいな」
「はい、ご主人様」
 この瞬間、妻は女となった。心は波乱の人生にときめき、女としての幸せに狂う。
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2012-12-20 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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之ち

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