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第23話 催眠療法プログラム終了

 身体が重くなった。ああ、元に戻ったんだとわかると目蓋を開く。
 あの光景が頭の中で残っていた。葵が阿久津一郎とセックスをしている現場。絶対にありえない光景を見ながら僕は興奮していた。それどころか彼女の口からでる罵声に感じてしまった。悪夢のようだったが、あれが僕の深層意識なのだろうか。
 やけに現実味がある光景だった。だが僕は椅子から一歩も動いていない。
 身体が自由になったことにようやくなれると、股間に妙な粘り気を感じた。どうやら、僕は射精してしまったらしい。夢精、でいいのだろうか。
「どうだったか聞くまでもないね。着替えの下着だ、使ってくれ」
「すいません」
 コンビニで売っているようなボクサーパンツを椿先生は用意してくれていた。
「気にしないでくれ。それよりどうだった? 自分の深層意識というのは」
「なんていったらいいか……すごい光景でした。あれって僕が思っていること、なんですよね。だったら僕は……」
「べつにおかしくないよ。それに今回の事を最後にして心に決めれば良い。誰にも、彼女を渡さないってね。だってそうだろ、彼女はキミの奥さんなんだから」
 じっと椿先生の瞳が僕を見てくる。感情がぼんやりとしているような眼差しだった。彼女は時折り、こういう目をする。
「葵は誰にも渡さない……そうですね。そう思います」
「だろ?」
 僕はトイレを借りて股間の汚れを拭く。さすがに完璧とまではいかないが仕方がない。貰った下着に履き替えて戻ると椿先生は一通の封筒をくれた。
「それはお礼だ。治験に協力してくれた、ね」
「ありがとうございます。でもいいんですかね、本当に貰って」
「いいさ。気にすることは無い。沢木君のおかげでボクの研究も捗ったんだ。謝礼は当然さ」
「なら……頂いておきます」
 封筒を鞄に入れて診察所を出ようとする。椿先生は玄関まで見送りにと着いてきた。
 本当に肩の力が抜けたようで、気分は晴れている。なにもかもすっきりしたようだった。ここへ来るといつもすがすがしい気分で帰ることができる。彼女には感謝するばかりだ。
「そうだ、子供が生まれたらなんですが、うちで小さなパーティーをやろうと思ってるんです。仕事場の部下や友達を集めて」
「ほう、それはまたいいことだ」
「もしよかったら先生も来てくれませんか」
「ボクも行っていいのかい?」
「もちろんですよ。先生にはお世話になりましたから。妻にも会わせたいし」
「わかった。その時は是非」
 僕らは互いに礼をして分かれた。
 青空のしたボクは家に帰るため歩き出す。
 葵を誰にも渡さない、と胸に刻みながら。

 完
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2012-12-20 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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之ち

Author:之ち
之ち(ユキチ)

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