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第10話 パーティへ

 ヘリが到着するとカズマはルサリィと一緒に乗り込んだ。ヘリには操縦するアンドロイドが一台いるだけで他にはなにもなかった。アンドロイドから渡されたタキシードに着替えてルーマニアへとやってきた。
 ストリガトゥーレ社はルーマニアに本社を置く。本社といっても超巨大な工場で山から谷まで広がっている。すべてアンドロイドによって開拓された土地で新たなるアンドロイドの製造が工場の役目である。
 カズマはヘリから工場を見下ろす。世界が機械化してしまったのではないかと思うほど冷たい世界だった。そんな世界のなか、天まで届きそうな塔がたっている。その塔こそがストリガトゥーレ本社である。
 ヘリに通信が入った。
「待ってたわよ、カズマくん」
 スオウ・ミカだった。彼女の肩から上がディスプレイになって現れる。
「さっそくで悪いんだけど、ヘリの場所を変えるわ。本社から南に位置する来客用へ向かってちょうだい」
「なにかあったんですか?」
「いま、カズマくんのご両親が使ってるのよ。重要人物の来客にね」
「なるほど」
 短い通信を終えてヘリは乗り場へと向かう。アンドロイドの操縦は完璧でまさにロボットの仕業だった。
 到着した場所は薄暗いコンクリートの真ん中だった。出迎えは一台の車だけ。いかにもな高級車で工場施設地帯のなかを走るには似合っていなかった。
 ヘリを降りて車に向かっていると突然身体を押さえつけられた。
「な、なに!?」
「背を下げてください、マスター」
 ルサリィがいった。その瞬間、なにか空気を弾く音がした。後方にいたヘリを操縦していたアンドロイドが火花を散らして倒れる。暗闇に音が連続してはじけた。
「襲撃?」と目を瞑ると「そのようです」とかえした。
 ルサリィは太ももに携帯していた拳銃を取り出す。額のヘッドギアから赤い光線が周囲をぐるりとなぞった。
「数は5です。少数ですが全員銃を所持しています」
 車の傍に向かい、カズマを陰に隠した。
「ここにいてください。マスターを狙う可能性は低いと考えます」
「ど、どこにいくの?」
「私が殲滅します」
「無茶だよ!」
 相手のほうが多い。さすがに五対一では勝ち目が無い。しかしルサリィは車から飛び出し疾駆する。人間ではない彼女の速度は夜闇に輝く残像を残していた。しかし残像を認識する頃には3メートルは先に進んでいる。
 夜闇に彼女の髪から落ちる粒子が煌めく。ヘッドギアの赤い光線が銃の狙いとなる。まずは1人、撃ち倒す。命中した瞬間、火花を散らした。襲撃したものはアンドロイドだった。
 今度は背後にいる敵を撃つ。ルサリィの動きは機敏で自身の加速になんら障害を持っていない。見事二体目を破壊した。
 三体目が接近戦を仕掛けてきたが軽くかわして顎を蹴る。よろめいたところに銃を撃ち機能を停止させる。
 残り二体が同時に仕掛けてくる。ルサリィは機械じみた動きの格闘に遅れをとらなかった。繰り出される拳と蹴りを完全に見切り片方を殴る。隙を突いた一撃はアンドロイドの身体を無理やり吹き飛ばす。
 残りの一体が蹴りを繰り出すがルサリィにはかすりもしなかった。足を払って眉間に銃を撃つ。一瞬にして四体のアンドロイドが破壊された。残った一体が立ち上がる。痛みはなくあくまで立ち上がる仕草であった。
 ルサリィは体勢を元に戻そうとしている敵に飛びつき、顔面を強打する。首から上が外れ、機械の管と骨を露呈させた。
 襲撃してきたアンドロイド5体が完全に機能停止となる。しかしそれで終わったわけではなかった。
「そこまでだ、綺麗なアンドロイド」
 車のすぐ傍から声がした。夜の冷たい空気に良く響く男の声だった。その声をルサリィは見る。カズマを隠していた場所だった。
「おっと、動くなよ。ご主人様を殺しちまうぞ」
 人間が1人、倒したアンドロイドの同型が3体。カズマを捕えていた。男の手には銃が握られカズマのこめかみに押し付けられている。ルサリィは動く事が出来なくなった。
「それでいい。だが……いろいろと邪魔をするかもしれない。だからお前にはこいつを受けてもらう」
 アンドロイドの一機が銃を向けた。抵抗出来ないままのルサリィは左肩に一撃を受ける。
「ルサリィ!」
「大丈夫さ、坊ちゃん。あれはウイルスで、動きを止めるだけだ。運がよけりゃ無事治る」
「お前!」
 暴れるが男の力は強く、さらにアンドロイドががっちりと拘束してくる。身動きが取れないまま車の後部座席へ放り込まれる。
「じっとしてろよ。でないとマジであの美人さん……壊しちゃうよ」
 ルサリィはその場に固定されたように倒れている。いつもはピンクの粒子が沸いているのにそれがない。機能が停止していた。
 何もできない自分だったが目を男に向けて睨みつける。決して屈する気はない。
「その目、気に入らないな……」
 男がそういうと風が吹いた。彼らしかいないはずのヘリ発着場に全く別の動きが出現する。
 赤い閃光が走りアンドロイドの首を切り落とす。まさに刃による一撃だった。切断された首が地面に辿り着くよりも早く、隣にいたアンドロイドの足首が切れる。
 男が気づいたころには三体目が持ち上げられていた。手にした銃は標的を捉えることができなかった。手首が握りつぶされていたのだ。
「な、なんだ、こいつ!?」
 突然現れた物体に銃を向ける。しかしその銃は一瞬の衝撃と共に破裂した。
「あがっ!?」
 破片が手に刺さり苦悶する。そんな男への感情などなく、三体目のアンドロイドが上空へ放り投げられた。足首をなくした二体目も放り投げると、それは追いかけて飛翔した。
 カズマがそれを見る。銀色の髪をした女だった。
 人間離れした怪力の持ち主で顔は見えない。彼女はその長い脚を剣のように煮たいのアンドロイドへ突き立てた。空中で二体を蹴り破壊した。
「て、てめぇ……」
 男がカズマに向かっていく。血だらけの手で掴もうとしたとき、上空から舞い戻ってきた女が腕を掴んだ。
「そこまでよ! イェレ!」
 スオウ・ミカの声がした。男は腕を掴まれただけでなく拘束される。
「カズマくん、大丈夫!」
「俺なら大丈夫! でもルサリィが」
 駆けつけたのはスオウ・ミカだけではなかった。続々と車がやって来ていた。どの車にもストリガトゥーレ社のマークが刻まれている。ミカはルサリィのほうへと向かっていき、傷のチェックに入る。
「ウイルスがどうとかって」
「心配ないわ。ルサリィは私に任せなさい」
 撃たれた左肩から赤い液体が流れていた。まるで人間でいう血だった。
「カズマくんは怪我はないみたいね。でも、ごめんなさいね。あいつらの侵入を見抜けなかったわ」
「いいんですよ。それより……」
 男が連行されていく。壊れたアンドロイドたちも車へ回収されていた。
 そんななか、たった一人の女が立っている。銀色の長髪を棚引かせる褐色肌。ボンテージ風レオタードに身を包み、機械のアクセサリーで装飾されていた。
「彼女は」
「S-PX-01-2イェレよ。ルサリィの妹」
 ルサリィと同じヘッドギアが目元を隠していた。巨大な一つ目をしているように見えた。表情を隠している彼女をカズマはじっと見つめた。
「さぁ。ルサリィを運びましょ。イェレ、護衛を頼むわ」
 イェレはなにもいわずに近づいてきた。ルサリィを抱えて車に乗せた。車にはすでにアンドロイドが運転席にいてスオウが助手席に乗る。ルサリィとイェレに挟まれるようにカズマは乗った。イェレは無言のままだった。
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プロフィール

Author:之ち
之ち(ユキチ)

小説中心に活動中。
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大阪在住・12/28生
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