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第21話 異常

 二体のアンドロイドと迎えた年末。
 12月31日の朝のこと、ベッドに潜りこんできたのはイェレだった。
「ほらっ、起きないとまたイタズラしてやるぞ~」
 甘く、くすぐってくるような声が耳元にかかると、カズマはイェレの髪を撫でてから起きた。イェレは少し不満げに頬を膨らませる。
「こらっ、起きるんじゃないっ! せっかくいろいろとしてやろうと思ったのにぃ」
 どうやら寝ている主人を玩具にでもしようとしていたらしい。
「いろいろって?」
「そりゃ……いろいろさ。バカなマスターが勃起させてるチンポをしゃぶったり、しこしこしたり……あたしの身体でご奉仕ってやつさ。いやか?」
「うれしいよ、イェレ……目覚めのチュウは?」
「もちろん、するさ。こうやってな……ちゅっ……んふふ、すっかりあたしにメロメロだな、マスターは」
 どちらかというとイェレのほうが、である。彼女の浮ついた心が作り上げる吐息と、熱にカズマの身体は冬場だというのに南国にいるようだった。銀色の髪はカズマの指が絡むたび赤い粒子を発光させる。イェレの感触が心地よいものなのだと目で確認できる。
「キス、うまくなったな。いい兆候だぞ……もっと、舌を絡ませて……」
 褒める言葉に抵抗もない。イェレの舌を自分が支配するように絡ませていく。ヘッドギアが微弱な光を放つと、カズマは臀部へと手を這わせた。瞬間、腰ががくっと震える。もう尻穴に直接触れなくてもイェレは先に意識してしまっている。臀部に何かが触れただけでも感じてしまうようになっていた。
「可愛いよ、お尻意識しちゃってるイェレは」
「うるさいぞ、黙って……んぅっ! んちゅぅ、ひきょう、ものぉ! んっ!」
 臀部への責めと、唇への責めを交互に行なう。意識を散らし、確実に感じさせる。指の動きは強くなってレオタードを食い込ませた。
「あひゃっ! こぉ、こぉらぁぁ……んぢゅうっ! ぢゅっ、っぱぁぁ!」
 キスも濃密になっていく。舌を絡ませるのではなく、抵抗力を失ったイェレを嬲るように弄っていく。
「んっ! そ、そうだっ! ぢゅぅ! もっとぉぉ! もっとだっ!」
 自分から舌を突き出してくる。朱肉は若い牡に舐られる。
 イェレの身体に腰を押し付け、下半身の疼きを教える。熱のこもった股間は朝の生理現象宜しく痛々しいほどに反り返っている。ボディスーツに堅物が当たると、イェレもまた自分の腰を押し付けようとしてくる。

 ピー! ピー! ピー!

「な、なに!?」
 突然、イェレのヘッドギアが高鳴りを上げた。警報装置のような音だった。密着していた身体が放れる。
「緊急連絡か……まったく、あの女か……どうした」
 ヘッドギアに手を当てるとイェレが通話装置をオンにする。彼女にアクセスするような人物は1人しかいない。平面ディスプレイが寝室に浮かび上がると製作者であるスオウ・ミカが現れた。
「ルサリィはどうしたの?」
 突然の会話に突然の質問だった。
「やつならまだ寝ているぞ。最近、やりすぎなくらいやっていたからな。体調管理に手間取っているんじゃないか」
「一度、確認を取ってもらえる?」
「なにをそんなに焦っている。すぐに再起動するさ……ん? お前、こっちに向かっているのか?」
 言葉なくうなずいた。
「とにかく、私がそっちに着く前にルサリィの状態を見てあげて」
 通信はそこで切れた。なにやら只事ではないらしく、さっきまでの情熱も消えてしまった。カズマはベッドからでると服を着る。
「気の早いやつだな」
「なにか、変だよ。ルサリィのこと、見にいこう」
 イェレは仕方なくカズマと一緒に寝室をでる。
 ルサリィ用の部屋へ入る。アンドロイドの体調管理を行なう棺が部屋のほとんどを埋めている。何本もの管が棺に装着され、ルサリィの身体を覆っている。イェレは壁一面に備え付けられたディスプレイを見る。そのディスプレイにはルサリィの体調パラメーターが表示されている。
「なにもおかしなところはないな」
「どうなってるとおかしいの?」
「そんなことも知らないのか……表示が赤くなっていると破損部分だ。黄色で表示されているとプログラムに異常がある。他にもバグや警告があるが……全部、緑で表示されてるだろ。機能に支障はない」
 ディスプレイはイェレのいうとおり緑の数値と文字でいっぱいだった。それが正常を意味する色なら、間違いなく正常である。
「起きてこないのはなんでだろ?」
 棺に向かう。冷たい機械の中でルサリィはじっとしている。
「知るかっ! ん……はやいな、もう来やがった」
 スオウ・ミカがやってきたらしい。二人はリビングで迎えることにした。
 ヘリから降りてきたのはスオウ・ミカ1人。挨拶もほどほどにルサリィの体調を見る。彼女は持参したパソコンをルサリィの棺に繋ぐ。医者が患者を診るように真剣な眼差しだった。
 リビングでイェレと待つしかなく、時間がすぎていくのを数えていた。いつもなら自分が起きている間は必ず起きているはずのアンドロイドが眠ったまま、昼を迎えた。
 今年の終わりまで12時間を切る。
 日課の授業もなく、なにをするにも集中できない。そんな時間が3時まで続いた。
「ごめんなさい、遅くなったわね」
 ようやくリビングにやってくるスオウ・ミカ。彼女は額に汗を流していた。部屋の中で身体を動かしたとは思えない。おそらく神経の使いすぎだろう。
「ルサリィ、目を覚まさないんですか?」
 黙ったまま、うなずく。
「あの子、ルサリィは最初から少しおかしかったの。人格プログラムがね。本当は私が組み込んだ人格があるんだけど、それがきちんと動いていなかったわ。普段の彼女はクールだったでしょ」
 ルサリィは感情を露わにすることはない。あるとすれば、性交の間ぐらいだった。
「いうならば、あれ自体がバグなのよ。身体と合わなかったのかと思ってしばらく様子を見ることにしたんだけど……治らなかった。しかもそこへ、あの襲撃事件。きっとあれが引き金になったのね。致命的な」
「というと治っていないどころか悪化したっていうんですか?」
「可能性はあるわ。彼女がこっちに来てからはどうだった。おかしいところはなかった?」
 カズマにはよくわからなかった。やや積極的になった感じはあったが、それが変化とはいいきれない。
「マスター、あったろ。あんなにセックスをねだっていたろ」
 あっさりとイェレがいった。
「なぁ、ルサリィは目覚めるのかどうかはっきりしろ」
「このままだと目が覚めることはないわね」はっきりといって「ただし」と付け加える。「ただし、ボディに異常はないから人格プログラムを破棄して再起動させればだけどね」
「それって!」
「そうよ。完全に初期に戻すってこと。彼女自身を失う事になるわね」
 今までのことが全部失われる。例え、ルサリィであっても、ルサリィではない。
「やだよ! そんなの!」
「わかってるわ。でね、カズマくんに相談があるの」
 にっこりと微笑むスオウ。真剣な眼差しに暖かみが宿る。
「相談……」
「ルサリィの人格プログラムに喝をいれてほしいの」
「えっ!?」
「彼女の人格プログラムはきちんと作動している。眠ったままに見えるけど、あれはおそらく自分から起動したくないって駄々をこねてるだけなのよ。なにが原因か知らないけれどね。そこをカズマくんが」
「ちょっと待て!」
「なによぉ! イェレ、私はいまカズマくんと話してるのよ」
「何を言っているのかわかったから言わせてもらう! カズマを、マスターをルサリィのなかに放りこもうってことだろ!」
「そうよ。引きこもってるルサリィの意識を引っ張り出せば万事解決じゃない!」
「だめだっ!」
 イェレが激昂していた。彼女の怒りがなにを意味するのか、それはカズマもよくしっている。
「なにか危険なの?」
「いいか、人格プログラムの中に入るって言うのは、意識で入るってことだ。パソコンのキーボードを叩くわけじゃない。マスターのここをつなげるってことだ」
 額に指を当てられる。その先はつまり、脳である。
「もしプログラムのなかに入って迷えば、帰ってこれなくなる。マスターは自我損失というわけだ」
「その確立は低いわよ」
「なぜだ! なぜ、そういえる」
「だって。イェレがいるじゃない。イェレだったらマスターをエスコートできるでしょ」
「はぁ!?」
 きょとんとするイェレ。アンドロイドというよりは人間そのものだった。
「なぜそうなるんだっ! あたしがルサリィを助ける理由など!」
「イェレのお姉ちゃんじゃない」
「それは形式番号だけだっ!」
「じゃあ助けないの?」
「当たり前だ! 助ける義理はない!」
 拒否するばかり。脚を組んでソファーに座るイェレは黙ってしまった。
 スオウはカズマにウインクする。イェレを動かせるのはあなただけなのよ、と言っていた。そしてルサリィを救うには必要なのだと。
「俺、行くよ」
「なっ!? なんだと! 話を聞いていただろっ! 危険だと」
「危険でもなんでも行かなきゃルサリィがいなくなる。そんなの嫌だ。だからイェレ、力を貸して」
 イェレの手をとる。
「俺は2人とも好きなんだ。どっちが欠けてもやだよ。イェレだって口ではそんな事言ってるけどお姉ちゃんのこと好きでしょ」
「そんなわけあるかっ! あたしはマスターを、独り占めしたいんだぞっ!」
 イェレの頬が真っ赤だった。彼女なりの告白でもあったのだろう。
 嬉しくて心臓が爆発しそうだったが今はそれどころではない。
「だめ! 2人一緒でなきゃだめ! でないともうイェレとはセックスしない! お尻も触らないし、浣腸もしないっ!」
「なぁ! バカっ!」
「あら、浣腸ってなに?」
 スオウが面白そうだといわんばかりの顔で近付いてくる。
「それともイェレは俺とセックスしたくないの? 俺の命令に逆らうの?」
 じっとイェレを見る。手を握っている限り、逃げ場はない。近付いてくるスオウの顔が追い討ちをかけるようになった。我が子の恥ずかしがる表情は彼女にとって最高の褒美でもあるのだから。
「……わかった」
「なんだって?」
「わかった! マスターについていくといったんだ! ルサリィの人格プログラムだろうとどこだろうと一緒に行ってやるっ!」
「ホント!」
「本当だ! 嘘など言ってないっ! そ、そのかわり、戻ってきたら絶対! ぜ~ったい! あたしとしろ! あたしを可愛がれっ! うんと甘やせっ! いいなっ!」
 カズマは辛抱たまらなくなって抱きついた。
「こっ、こらまだ早い!」
「ありがとっ! ありがとうイェレ!」
 2人がソファーで抱き合うとスオウは微笑んだ。彼女にとって製作したアンドロイドは子供そのもの。特に最新型であるイェレが幸せそうにしている姿はご褒美そのものであった。
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2013-02-03 : 小説 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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